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Q

「ち」を言うのが苦手な場合、ボイストレーニングと言語聴覚士の発音矯正のどちらを選べばいいですか?

発音・大人の発音矯正
2026.02.04 更新

ボイトレ・話し方教室・言語聴覚士の発音矯正は何が違うの?

お子さんやご自身のの滑舌や話し方が気になるとき、「どこに相談すればいいのかしら?」と迷うことはありませんか?

最近ではボイストレーニング(ボイトレ)や、元アナウンサーが教える話し方教室など、声・話し方・滑舌を磨く場所がたくさんありますよね。

一方で、ことばの専門家である言語聴覚士(げんごちょうかくし)による発音矯正もあり、その違いが分かりにくいと感じるかもしれません。

「声・話し方を良くする」という点では共通していますが、実はその目的やアプローチの仕方は大きく異なります。

この記事では、お子さんにとって、あるいはご自身にとって、どの場所が最適なのかを判断するためのポイントを詳しく解説します。

ボイストレーニングと言語聴覚士の発音矯正の違いとは?

ボイストレーニングと言語聴覚士の発音矯正の違いとは、一言で言えば「芸術・教養としての向上」か「医療・リハビリとしての改善」かという棲み分けです。

ボイトレは、主に「もっといい声になりたい」「歌が上手くなりたい」といった、プラスアルファの魅力を引き出すことをゴールとしています。

そのため、基本的には喉やことばの機能が健康な方を対象としており、エンターテインメントや自己研鑽が主軸となります。

具体的には、以下のような項目を磨いていきます。

  • 腹式呼吸
  • 共鳴(声を響かせること)
  • 音域の拡大
  • ビブラート

これに対して、言語聴覚士によるアプローチは、日常生活に支障がある状態を改善するための「機能の回復」を目的としています。

脳卒中の後遺症や、生まれつきの構造・発達の問題で「ことばがはっきり出ない(構音障害)」など、専門的な介入が必要なケースを扱います。

具体的なプログラムには以下のようなものがあります。

  • 舌の動かし方の訓練
  • 嚥下(飲み込み)の改善※医療機関に限る※
  • 正しい音を作るための構音訓練(スピーチ・リハビリテーション)

ボイスクリニックなどで声の衛生指導を行う言語聴覚士もいますが、本格的な歌唱指導は行わないというケースが多いです。

また、「『き』が『ち』になる」「サ行が言えない」「ラ行が言えない」のような、特定の音が言えるようになる発音矯正(構音訓練)については、言語聴覚士が得意としています。

項目

ボイストレーニング

言語聴覚士(ST)

目的

歌唱力向上、表現力、響きを美しくする

機能の回復、コミュニケーション障害の改善

対象者

健康な喉を持つ人(歌手、趣味の人)
歌が上手くなりたい人

構音障害、失語症、発達障害がある人、ことばの遅れのある子ども、吃音、ディスレクシア(読み書き障害)

内容

腹式呼吸、共鳴、音域拡大、ビブラート

舌の動かし方の訓練、接触嚥下(飲み込み)改善

資格

民間資格または資格なし(実績重視)

国家資格(医療従事者)

※ 実際には、施設や先生ごとに異なる場合があります。
※ 摂食嚥下訓練は医療機関で行う必要があります。

元アナウンサーの話し方教室と言語聴覚士の発音矯正の違いとは?

元アナウンサーの話し方教室と言語聴覚士の発音矯正の違いとは、視点が「演出とマナー」にあるか「解剖学的な機能」にあるかという点にあります。

話し方教室は、いわば「対人コミュニケーションの総合演出」を学ぶ場です。また就職面接やスピーチ、営業職のプレゼンテーションのようなビジネスの文脈により特化していたり、アナウンサー試験対策に特化しているなどの特徴があります。

プロのアナウンサーが持つ技術をベースに、「相手にどう伝わるか」「どうすれば好印象を与えられるか」という面をデザインしていきます。

得意分野は以下の通りです。

  • 標準語のアクセント
  • スピーチの構成(起承転結、聞いている人を惹きつける流れを作る)
  • 抑揚や間の取り方
  • 人前での立ち居振る舞い
  • 身だしなみ

一方、言語聴覚士の場合には、「正しく音を作れているか」という解剖学的・運動学的な側面から評価やトレーニングを実施できるのが強みです。

例えば「特定の音がどうしても言えない」「舌足らずな癖がある」といった悩みに対し、口の中の動きを分析してアプローチします。

もし「シがどうしても空気が漏れるような言い方になってしてしまう」という特定の悩みがあった場合、それぞれの回答はこうなるかもしれません。

話し方教室:「ゆっくり丁寧に、笑顔で話せばカバーできますよ」
言語聴覚士:「舌の隙間から漏れる空気の通り道を中央に修正するために、舌の構えを作りましょう」

言語聴覚士はどんなことを学んでいるの?

言語聴覚士は、資格を取得する過程でさまざまな必修科目を履修します。

一例を挙げると、言語学、音声学、音響学、心理学、脳神経内科学、解剖学、リハビリテーション学などです。

滑舌の背景にある人体の構造や機能、人が新たなスキルを獲得する効率のよいプロセス、運動のトレーニングに関する知識などがある点が強みといえます。

どちらを選ぶべき?

選ぶ基準は、今の状態が「マイナス(困りごと)をゼロに戻したい」のか、それとも「今の状態をよりプラスに向上させたい」のか、という点にあります。

「病気やケガではないけれど、もっと堂々と話して自信をつけたい」という向上心が目的であれば、話し方教室やボイトレがおすすめです。

これらは社会的なスキルを磨き、生活の中で無理なく自分の魅力を伝えるための強力な武器になります。

しかし、「特定の音がどうしても正しく言えず、何度も聞き返されて切実に困っている」という場合は、当相談室、ことばの相談室ことりのような言語聴覚士が在籍する施設を検討してみてください。

「話し方教室に何年も通ったけれど、滑舌のコンプレックスだけは解消されなかった」という方が言語聴覚士を訪ねると、一瞬で原因が判明して解決に向かう、ということもよくあります。

以下の項目を参考に、今のニーズを確認してみてください。

  • ボイストレーニング:歌を上手くしたい、声そのものを響かせたい
  • 話し方教室:人前で論理的に、分かりやすく好印象で話したい
  • 言語聴覚士:舌が回らない、「ち」など特定の音が歪む、物理的な話しづらさを直したい

もし、ご自身やお子さんで「『き』が『ち』になる」「サ行が言えない」「ラ行が言えない」のような、特定の音が言えないお悩みがあれば、ことばの相談室ことりがその原因を分析し、最適な道筋をご提案します。