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「うちの子、読み書きが難しい。」 発達性ディスレクシアってなに?

読み書き
2025.05.31 更新

小学校に上がり、本格的に文字の学習が始まると、「ひらがなを覚えられない」「小さいっ・ゃ・ゅ・ょが読めない・書けない」「うちの子、文字を読むのが苦手かも?」「書くのに時間がかかりすぎるのはどうして?」といったご相談をいただくことがあります。もしかしたら、それは「発達性ディスレクシア」が関係しているかもしれません。

今回は、「発達性ディスレクシア」とは何か、そしてどのような検査があるのかについてお話しします。

発達性ディスレクシアについて

発達性ディスレクシア(発達性読み書き障害)とは?

発達性ディスレクシアとは、知的な発達に遅れがないにもかかわらず、文字の読み書きに著しい困難がある学習障害のことを言います。
読むことに対する困難さに対して「ディスレクシア(読字障害)」、書くことに対する困難さに対して「ディスグラフィア(書字障害)」と区別して呼ぶこともありますが、両方を合わせて「ディスレクシア」と称されることも多いです。

どんな症状があるの?

症状の現れ方には個人差がありますが、一般的に以下のような特徴が見られることがあります。

読むことの困難さ
  • 文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)
  • 単語や文節の途中で区切って読んでしまう
  • 文字や単語を読み間違える
    例:「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」など形が似た文字の混同、単語の読み飛ばし
  • どこを読んでいるのか分からなくなってしまう
  • 文章の内容を理解するのが難しい
  • 読むのが非常に遅い
書くことの困難さ
  • 文字の形をなかなか覚えられない、思い出せない
  • 鏡文字を書く
    例:「さ」を左右反対に書く
  • 似た音の文字を間違える
    例:「お」と「を」、「じ」と「ぢ」
  • 文法的な誤りが多い
    例:助詞の抜けや間違いなど
  • 作文や感想文など、文章を書くのが極端に苦手
  • 板書を書き写すのにとても時間がかかる

なぜ起こるの?

発達性ディスレクシアは、本人の努力不足や怠慢が原因ではありません。
生まれつきの脳機能の発達の違いによるものと考えられています。文字を認識したり、音と文字を結びつけたりする脳の働きに、何らかの特性があるのです。

大切なのは、お子さんの困難さに気づき、「なぜできないの?」と叱るのではなく、「何に困っているのだろう?」と理解しようとすることです。早期に気づき、適切なサポートを受けることで、お子さんの困難さを軽減し、自己肯定感を育むことができます。

発達性ディスレクシアのアセスメントや診断に用いられる検査

発達性ディスレクシアの診断は、専門の医師が行います。
診断にあたっては、さまざまな情報を総合的に評価しますが、その一環として以下のような検査が行われることがあります。

これらの検査は、お子さんの読み書きの力だけでなく、どのような認知能力に得意・不得意があるのかを客観的に把握するために行われます。

知能検査

WISC-Ⅴ

世界的に広く用いられている児童用の知能検査です。言語理解、流動性推理、視覚空間能力、ワーキングメモリ、処理速度といった、学習に必要なさまざまな認知能力を測定します。全体の知的な発達のバランスや、得意なこと・苦手なことを把握するのに役立ちます。
*ことばの相談室ことりでは、WISC-Vを実施することができます。

KABC-II

認知処理過程と知識・技能の習得度を分けて測定できる検査です。情報を処理する際の得意な方法(継次処理・同時処理)や、語彙力、読み書き、算数などの基礎的な学力を評価します。
*ことばの相談室ことりでは、K ABC-Ⅱは所有していません。

読み書き検査

STRAW-R 標準読み書きスクリーニング検査

ひらがな・カタカナ・漢字の単語や文の読み書きの正確さ・速さを評価します
学年ごとの平均値と比較することで、読み書きの困難さの程度を客観的に把握することができます。

URAWSS Ⅱ 小中学生の読み書き理解

読みと書きの速度を計測し、同学年との平均と比較し評価を行います。
音声や機器などの様々な介入手段を検討し、比較することができます。

その他

必要に応じて、視知覚や聴覚処理に関する検査、注意力や音韻意識を評価する検査、言語理解検査などを実施します。

  • Rey聴覚性言語学習テスト(AVLT)
  • Rey複雑図形検査(Rey-Osterrieth Complex Figure Test, ROCFT)
  • DN-CAS認知評価システム
  • ELC 読み書き困難児のための音読・音韻処理能力簡易スクリーニング検査
  • 抽象語理解力検査
  • LCSA言語・コミュニケーション評価スケール 学齢版
    など

これらの検査結果は、お子さんの困難さの背景を理解し、その子に合った学習方法や支援計画を立てる上で非常に重要な手がかりとなります。

ことばの相談室ことりでは

ことばの相談室ことりでは、発達性ディスレクシアの疑いがあるお子さんや、診断を受けたお子さん、そして保護者の皆様からのご相談をお受けしています。

「うちの子、もしかしたら…?」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。言語聴覚士がお話を伺い、アセスメントを通じて、具体的な関わり方や学習方法についてアドバイスさせていただきます。

  • 検査結果をどう活かせばいいかわからない
  • 学校の先生にどう伝えたらいいか悩んでいる
  • 学習環境の調整
  • ICT機器の活用

このようなご相談にも応じます。お子さんに合ったサポート方法を一緒に考えていきましょう。

発達性ディスレクシアは、早期の気づきと適切なサポートがあれば、困難さを乗り越え、その子らしい学び方を見つけていくことができます。保護者の皆様だけで抱え込まず、ぜひ専門機関にご相談ください。

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(文・堀美月)

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