「お子さんの滑舌が気になる」「お友達や先生から指摘されて不安になった」という経験があると、どうしてあげればいいのか迷いますよね。
特にサ行やラ行などは、話すときにもよく使う音ですから、不明瞭さが目立つと心配になることでしょう。
この記事では、特定の音が言いづらくなる理由や、よく耳にする「舌の短さ(舌小帯短縮症)」との関係性、そして家庭でできる見分け方のポイントについて、言語聴覚士の視点で詳しく解説します。

結論から申し上げますと、サ行・ザ行・「つ」・ラ行が言いづらい場合、舌が短いことが関連している可能性はあり得ます。
舌が短いという現象は、正確には「舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)」を指していると考えられます。
「舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)」という言葉は、普段の生活ではあまり聞き慣れないですよね。
簡単に言うと、「舌の裏側にある筋(すじ)が短すぎたり、前の方まで伸びすぎたりしている状態」のことです。
舌小帯(舌の裏側にある筋・ひも状のひだ)が短いと、舌の動きが制限されます。

鏡で口を開けて舌を上げたときに見える、舌の裏側から口の底へとつながっている細いヒダ(筋)のことです。
舌小帯(ぜつしょうたい)自体は、誰にでもあるものですが、このヒダの長さや付いている位置には個人差があります。
先天的な形の異常・違いというと、「ふつうは生まれてすぐに発見されるものなんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、哺乳や食事により栄養が接種でき、生活に支障が無ければ滑舌に影響があっても見過ごされることがあります。
当相談室(ことばの相談室ことり)では、成人された20代や30代の方が滑舌の相談にいらした際に、舌小帯短縮症がみつかったことが何度かありました。
念のため舌の可動域(動かせる範囲)を見てみた際に舌小帯が短いかもしれないという話になり、病院の受診を進めたところ、「舌小帯短縮症である」と分かったのです。
意外と発見されずに過ごしている方が、世の中には多くいるようです。

サ行・ザ行・「つ」・ラ行、これらの音はすべて、舌を精密にまたは素早く動かしたり、上あごや歯茎に近づけたり弾いたりと、「舌の自由な動き」を必要とする音です。
舌の裏スジである舌小帯が短いと、可動域制限と言って舌を自由に動かせる範囲に制限がかかります。そのため、言いづらい音が出てくることがあります。
特に関連が深いのは以下の通りです。
サ行・ザ行・「つ」を出すためには、舌の先を上の歯茎の裏に近づけ、狭い隙間から息を通す(摩擦・破擦)ことが必要です。
舌が十分に持ち上がらなかったり、位置が安定しなかったりすると、空気が左右に漏れて「シャ・シュ・ショ」のようなあいまいな音になったり、音を出すために舌にかなり力を入れて話したりしがちです。
人によっては、少し舌を口の外に出しながら話すといった特徴になることもあります。
また、ラ行を出すためには、舌先を上の歯茎に一度つけ、パッと弾く動きが必要です。
舌小帯が短いと、舌先を上にあげる動作そのものが負担になり、音が不明瞭(「ダ」や「ヤ」に近い音など)になります。
このヒダが短いと、いわば「舌が短い紐で地面に縛り付けられている」ような状態になります。
その結果、生活の中で以下のような制限が出てくることがあります。
舌が上がらないと上あごに舌を付けることができません。
また、舌を前に突き出そうとすると、ヒダに引っ張られて舌の先がハート型にくびれるのが大きな特徴です。
その他にも、食べ物を口の中でまとめにくい、歯に詰まったものを舌で取れないといった食事面での困り感が出ることもあります。

お子さんの滑舌の原因が「物理的な長さ」にあるのか、それとも「使い方のクセ」にあるのか、気になりますよね。
まずは、以下の項目に当てはまるものがあるか生活の中で観察してみてください。
「あっかんべー」をした時に、舌の先がシュッと尖らずに凹んでしまう場合は、筋に引っ張られているサインです。
また、口を大きく開けた状態で、舌の先を上の前歯の付け根にタッチできるかどうかも、重要な評価ポイントになります。
もし、舌をしっかり上にあげることができ、形もハート型にならないのであれば、物理的な長さの問題ではなく、「使い方の問題」である可能性が極めて高いです。
これを専門用語で「機能性構音障害」と呼びます。
言葉にはたくさんの音があり、喉や舌や唇、鼻腔の共鳴などで出し分けています。
滑舌の問題は、原因によってアプローチが変わります。
大切なのは、「単なる苦手」だと片付けず、お子さんの今の状態を正しく把握することです。
舌小帯が原因で、物理的にどうしても動かない場合は、歯科や口腔外科での手術を検討することもあります。
一方で、使い方のクセが原因であれば、ことばの相談室ことりのような施設で、言語聴覚士と一緒に正しい舌の位置を覚える練習(構音訓練)を行っていきます。
舌全体を上あごに吸い付ける「舌鳴らし(カランと音を鳴らす)」などの舌の巧緻性や筋力を高めるトレーニングも、生活の中で無理なく取り入れられる有効な方法です。
手術で舌が動くようになっても、長年染み付いた話し方のクセはすぐには治りません。新しい舌の動きを正しい発音につなげるためのトレーニングを継続的に行う必要があります。
ことばの相談室ことりでは、病院でのリハビリ期間が終わった後や、通院するほどではないけれど改善したいというご希望にもお答えいたします。
もし日常生活で不便を感じていらっしゃるなら、一度専門家に相談してみるのが一番の近道です。
歯科や口腔外科など医療機関では形態的な診断や必要があれば外科的な治療がおこなわれます。
言語聴覚士は、発音のクセを分析し、具体的な練習プログラムを提案します。
生活の中で、特に「このことばが言いにくい」といった具体的な例はありますか?
もしよろしければ、いつ頃から気になり始めたかなど、ことばの相談室ことりまでお気軽にお聞かせください。
状況に合わせた最適なアプローチを一緒に考えていきましょう。