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2歳の男児です。話せることばは40語程度で、二語文がありません。レイトトーカーでしょうか?

ことばがゆっくり
2025.05.27 更新

「うちの子、周りの子よりお話するのが少ない気がする…」「ことばが増えるのがゆっくりで、少し心配…」

お子さまの成長は一人ひとり違って当たり前と分かっていても、ことばの発達については、ふとした瞬間に気になることがあるかもしれません。このコラムでは、お子さまのことばの発達について知っておきたいこと、ご家庭でできること、そして私たち専門家がお手伝いできることについてお伝えします。

レイトトーカーとは

お子さんがレイトトーカーかどうかの判断は、お話していることばの数(表出語い)や文の数で行います。
1~2歳の間ではこどもが話すことばの数は個人差が大きいために、レイトトーカーかどうかの判断は2歳を過ぎてから行われます。
一般的に以下のような項目で確認を行います。

  • 表出語彙(50語以下)※日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙(MCDI)による
  • 2語文がほとんど出ていない
  • 日常生活での理解に問題がない
  • 知的な遅れがない
  • 人とのコミュニケーションに問題がない

田中裕美子,遠藤俊介,金屋麻衣. ことばの遅れがある子ども レイトトーカー(LT)の理解と支援. 学苑社. p.6

もしかして「レイトトーカー」? ことばの育ちの目安

一般的に、2歳(24カ月)くらいになると、話せることばが200~300語ほどになり、「ワンワン きた」「ブーブー いく」のような二つのことばをつなげた文(二語文)が出てくると言われています。

もし、2歳のお誕生日を迎えた頃に、話せることばが50語に満たなかったり、二語文がまだ見られない場合、「レイトトーカー」と呼ぶことがあります。例えば、「うちの子は今2歳で、ことばは40個くらい。私のいうことは比較的に伝わるし、生活でも困りはない。だけど二語文は話さないな」という状況であれば、このレイトトーカーの範囲に入ると考えられます。

レイトトーカーとその後

  • 発現率14.3%、男児は女児の3倍
  • そのうち75%は3歳までには追い付くが、15~20%は言語発達障害(DLD)、特異的言語発達遅滞(SLI)、自閉スペクトラム症(ASD)に至る
  • やりとりでの困りは減ったとしても、学習場面(抽象的なことばを多く含む学習言語の習得)での困りにつながることもある

でも、ここで大切なのは、「レイトトーカー」だからといって、必ずしも深刻な状態というわけではないということです。その後の発達の道のりは、お子さまによって本当にさまざまです。特に、大人の言うことをよく理解していたり、身振り手振りで一生懸命伝えようとしたりする気持ちがたくさん見られるお子さまの場合は、ゆっくりと、でも着実にことばが育っていくことも多いのです。

ことばの相談ってどんなことをするの?

ことばの相談室ことりにご相談いただいた場合、私たちはまず、お子さまが安心して過ごせるようなリラックスした雰囲気の中で、じっくりと様子を見させていただきます。具体的には、次のようなことを親子と一緒に確認していきます。

  • お父さんやお母さんとのコミュニケーションの様子
    視線を合わせるか、身振り手振りを使うか、大人のことばを真似するか、指さしをするかなど
  • 簡単な指示や問いかけをどのくらい理解し、反応できるか
  • おもちゃを使った遊び方や、周りの人との関わり方
    どんな遊びが好きか、どんな風に関わろうとするかなど
  • お子さまの表情や気持ちの安定、親子間での情緒的なやり取り
  • お子さまがどんなことばを話しているか、どのくらいはっきり発音できるか
    「バナナ」を「ナナ」と言うなど、発音の誤りや省略のパターンも参考にします

これらは、お子さまのことばの状態だけでなく、コミュニケーション全体の様子や発達の土台を理解するために大切な情報となります。

より丁寧なサポートを考えたいサイン

ことばの発達がゆっくりなお子さまの中でも、特に丁寧なサポートや専門的な関わりを考えた方が良いサインがいくつかあります。

  • ことばの理解が低い、または反応が極端に少ない
  • 身振りや視線合わせといった、ことば以外のコミュニケーション方法があまり見られない
  • 人の真似をしたり、伝えようとしたりする意欲があまり感じられない
  • ことばの数がある時期から停滞しているように感じる
  • 日常生活や保育園などの集団生活で困ることが出てきている

これらのサインが複数見られる場合は、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。早期に適切なサポートを始めることで、お子さまのことばの育ちをよりスムーズに後押しできる可能性があります。

ことばの発達を促すために、おうちでできること

ことばを育む上で、ご家庭での日々の関わりはとても大切です。難しく考えず、お子さまの気持ちに寄り添いながら、楽しくことばに触れる機会を増やしてあげましょう。

お子さまの興味や関心に合わせてことばをかける

「赤い電車だね!」「ワンワン、かわいいね」などとお子さまの視線の先にあるものについてことばを添えましょう。また、たくさんの情報を一気に伝えるのではなく、〈見えているものの名前〉+〈様子を表すことば〉など、短い文章で伝えるようにしましょう。

お子さまの言い間違いは、否定せずに自然な形で正しいことばを聞かせる

お子さまが『うちゃ』と言ったら、「そうね、うさぎだね」と優しく言い添えましょう。「違うでしょ!」と指摘をしたり、言い直しをさせる必要はありません。

選択肢を提示する質問を増やす

「何?」と聞くより、「りんごとみかん、どっちがいい?」などと選択肢を与えましょう。ことばだけでなく、指さしや首振りなども用い、やりとりの基礎の力を育むことができます。

親子で一緒に楽しめる活動の中にことばを取り入れる

絵本の読み聞かせ、手遊び、リズム遊びなどお子さまの好きな遊びを一緒に楽しみましょう。

ことば以外のコミュニケーションも積極的に活用する

身振りや表情などを用い、ことばがなくても気持ちが伝わるといった経験を積みましょう。

大切なのは、お子さまが「伝えたい」「話したい」と思えるような温かい雰囲気と、楽しいコミュニケーションの経験です。

ことばのサポート、早めに始めることのメリット

「まだ小さいから、もう少し様子を見ようかな」と考えることもあるかもしれません。もちろん、それも一つの考え方です。しかし、ことばの発達に関しては、早い段階から積極的に関わっていくことが、お子さまにとって多くのメリットをもたらすことが分かっています。

深刻な状況でなくても、ご家庭での働きかけを意識したり、必要に応じて専門家のサポートを受けたりすることは、ことばの発達をよりスムーズにするだけでなく、将来的な学習面や社会性の発達にも良い影響を与えると言われています。また、親子でことばについて一緒に取り組む時間は、親子の絆を深め、保護者の方の不安を和らげることにも繋がります。

ことばの相談室での継続的なサポート

ことばの相談室ことりでは、一度ご相談いただいた後も、定期的なフォローアップを通じて、お子さまの成長を継続的にサポートさせていただきます。

1~3カ月ごとなど、お子さまの状態に合わせた頻度で実際にお会いし、ことばの数や理解する力、コミュニケーションの様子などを一緒に確認していきます。また、ご家庭での働きかけの成果や課題を共有していただきながら、その時々のお子さまに合ったアドバイスや具体的な方法を提案させていただきます。

こうした継続的な関わりは、お子さまの成長を見守るだけでなく、保護者の方が安心して子育てに取り組めるようお手伝いするという大切な意味も持っています。もし、転居や入園など生活環境に変化があった場合には、よりきめ細かくフォローアップを行うこともあります。

お子さまの「ことば」の発達で気になることがあれば、どうぞ一人で抱え込まず、ことばの相談室ことりにお気軽にご相談ください。私たちは、お子さまとご家族の笑顔を応援しています。

(文・堀美月)

―おしらせ―

熊本県熊本市中央区に、ことばの相談室ことりの2号店となる、
「ことばの相談室ことり くまもと桜町」が開室しました。

■ 所在地
熊本県熊本市中央区桜町1−28
桜町センタービル 406号室
※複合施設サクラマチクマモトからすぐ近くです