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子どもの話すことばが聞き取りにくく、2~3回聞き返すと、話すのをやめてしまいます。どのように対応すればよいでしょうか?

発音
2025.05.21 更新

「うちの子の言っていることが、時々よく分からない…」 「何度か聞き返すと、なんだか不機嫌になったり、話すのをやめちゃったりする…」

お子さんのことばが不明瞭で、そんな風に悩むことはありませんか? 一生懸命伝えようとしているお子さんの気持ちに応えたいけれど、どうしたらいいか戸惑うこともありますよね。

ことばが聞きとりにくい…… 対応方法は?

このコラムでは、言語聴覚士がマンツーマンでことばの相談やレッスンをおこなっていることばの相談室ことりから、お子さんの「伝えたい!」という気持ちを育むためのご家庭でできる具体的なことばがけの工夫を分かりやすくご紹介します。

なぜ、何度も聞き返すのは避けた方がいいの?

お子さんは、自分の話したことが相手に伝わらないと、「わかってもらえない…」と不安になったり、自信をなくしてしまったりします。特に、発音がはっきりしない場合、何度も聞き返されることで話すこと自体が嫌になり、「もういいや…」と諦めてしまうことも少なくありません。

大切なのは、無理に聞き返そうとしない姿勢です。

聞き取りにくいことばへの対応:3つのポイント

では、お子さんのことばが聞き取れなかった時、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

1. 「〇〇って言ったのかな?」と聞きしすぎずに、思いを受け止めましょう

聞き取れなかった時に、「ごめんね、聞こえなかった。もう一回言って?」とストレートに聞き返す代わりに、「もしかして、〇〇って言ったのかな?」と、お子さんが伝えたい内容を推測して返してあげましょう。

もし推測が違っていても大丈夫。「そっか、違ったね。教えてくれてありがとう」と明るく伝え、お子さんが話す意欲を失わないようにすることが大切です。

2. お子さんの「伝えたい!」をキャッチ!推測のヒント集

「推測すると言っても、どうすれば…?」そんな時は、以下のヒントを参考にしてみてください。

今、何してる?「状況」に注目!
    • 絵本を見ながら何か言っている時:
      例:お子さんがクマの絵を指さして『うーあ!』と言ったら、「くまさん、いたね」「くまさんが、がおーって言ってるのかな?」
      … 絵本の中のキャラクターや場面に関することかもしれません。
    • キッチンで冷蔵庫を指さしながら「たー」と言った時: 
      例: 「何か食べたいのかな?」「ジュースが飲みたいの?」
      …とってほしいもののことを伝えているかもしれません。
    • 外遊び中、空を指さして何か言っている時: 
      例:「あっ、飛行機かな?」「お空がきれいだねって教えてくれたの?」
      …見つけたものを伝えようとしているのかもしれません。 
    • おやつの時間、手を伸ばしながら何か言っている時:
      例:「これがほしいのかな?」などと気持ちを汲み取ってみましょう。
ことばだけじゃない!「表情」や「しぐさ」も大切なサイン
    • 何かを指さしている時は、その方向や指さすものに注目してみましょう。
    • 嬉しそうな顔、困った顔など、表情からも気持ちを読み取ることができます。
うちの子の「大好き!」や「いつものこと」もヒントに
    • お子さんの性格や好きなものを普段からよく見ておくと、「もしかして、あのキャラクターのことかな?」「いつものあれが欲しいのかな?」と推測しやすくなります。
    • 内気なお子さんなら、言い直すのをためらってしまうかもしれません。そんな時は、より優しく気持ちに寄り添ってあげましょう。
    • よく口にすることばや、その子特有の言い方なども覚えておくと、コミュニケーションがスムーズになります。

3. 正しい発音の自然な伝え方:「リキャスト」という方法

日常会話の中で、お子さんの発音の間違いを指摘したり、無理に言い直しをさせたりする必要はありません。さりげなく正しい発音を伝える「リキャスト」という方法が効果的です。

例えば、お子さんが「とー」と言った時に、「うん、トマトだね」と、正しい発音で返してあげるのです。このように、自然な会話の中で正しいことばに触れる機会を増やすことで、お子さんは負担を感じることなく、少しずつ正しい発音を覚えていくことができます。

「話したい!」を引き出す、とっておきのことばがけ

たとえ発音が不明瞭でも、お子さんは一生懸命あなたに何かを伝えようとしています。その「伝えたい!」という気持ちをしっかりと受け止め、

  • 「教えてくれてありがとう!」
  • 「そうなんだね、お話してくれて嬉しいな」

など、ポジティブなことばをたくさんかけてあげましょう。「ママ(パパ)に伝わった!」「お話しするのって楽しいな!」という気持ちが育てば、自然と話す意欲やコミュニケーション能力も高まっていきます。

最後に

お子さんのことばの発達は、一人ひとりペースが異なります。今回ご紹介したような関わり方を続けることで、お子さんは発音に自信がなくても、安心して話せるようになっていくでしょう。

もし、ご家庭での関わり方に迷ったり、専門的なアドバイスが欲しいと感じたりした際には、どうぞお気軽にことばの相談室ことりにご相談ください。お子さんと保護者の方の気持ちに寄り添いながら、専門的な視点からサポートさせていただきます。一緒に、お子さんの「話したい」気持ちを大切に育んでいきましょう。

(文・堀美月)

―おしらせ―

熊本県熊本市中央区に、ことばの相談室ことりの2号店となる、
「ことばの相談室ことり くまもと桜町」が開室しました。

■ 所在地
熊本県熊本市中央区桜町1−28
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※複合施設サクラマチクマモトからすぐ近くです